電子書籍と紙の商業出版、選ぶならどっち?
2020/06/25
こんにちは、保護ねこ8匹と暮らす出版コンサルタントの樺木宏です。
さて、たまにいただく質問に、
「電子書籍を自分で出すのと、紙の商業出版、どちらを出した方がいいのか?」
というものがあります。
電子書籍元年といわれてからはや10年。
ゆるやかなペースながら、電子書籍はコミックスなどを中心に浸透し、
身近かなものになってきましたので、
気になる人も多いかもしれませんね。
結論からいえば、
「両方出す」
のが正解です。
紙の本と電子書籍、それぞれに長所があるのですから、
両方のメリットを得るのが最も望ましいのは当然です。
結論はシンプルですね。
ただし、気をつけなければいけない大事なポイントがあります。
それは、「順番」です。
ここを間違えてはいけません。
「まず紙の本で商業出版して、一定の力量をつけた上で、電子書籍を出す」
この順番でなくては、うまくいかないのです。
それはなぜか?
なぜなら、電子書籍は、
「製造・営業・広告 流通・販売を、自分でやらなくてはいけない」
からです。
紙の本で商業出版をするなら、企画さえ通れば、必要な費用は出版社が全額負担してくれます。
製造、つまり印刷費用ももちろんそれに含まれます。
他にも、書店への営業をしてくれる人も出版社の負担で行なってくれますし、
売れそうなら、出版社が広告費を負担して新聞広告などを打ってくれることもあるでしょう。
流通の面では、書籍の専門商社である取次が、全国の書店に配送してくれますし、
書店では、立地のいい場所で、書店員さんがあなたの本を販売してくれます。
このように、紙の本で商業出版をすれば、
「製造・営業・広告 流通・販売」は、全て出版業界がやってくれます。
しかも、あなたが書いた原稿に対して、執筆料として印税を支払ってくれるのです。
しかし、電子書籍を自分で出すとなると、
これらの全てがあなたの負担になります。
印刷費用はかかりませんが、コンテンツの質を高める努力、データの作成も自己負担。
自ら見込み客リストをもっていなければ、広告なども全て自分で打たなくてはいけません。
新人著者が普通に電子書籍のサイトに登録するだけでは、ほとんど本が売れることはないからです。
このように、「ほとんど全てを自分でやらなければいけない」ので、
一定の企画力、そしてマーケティング力を培っていない段階では、
電子書籍を自分で出してもほとんど売れることはありません。
売れる絶対数が少ないのですから、多少印税率が高くても、意味がないのです。
コンテンツの質を高める余地も大きいため、
「この程度の人か」と誤解を与えてしまい、
むしろ出さないほうがよかった、というケースすらあるでしょう。
ちなみに、amazonなどの電子書籍プラットフォームは、売上の30%ほどを持っていきますが、
この数字は実は、紙の商業出版で、リアル書店と流通商社である取次の取り分を合わせた額と、ほとんど同じです。
また、出版社の中には紙の本を出すと、電子書籍も「ついで」に一緒に刊行してくれるところも多いです。
このように考えくると、紙の商業出版は、
新人著者の段階では、得難い多くのメリットを肩代わりしてくれていることが分かります。
印税は電子書籍より少ないながらも、自力ではできない多くの仕事を出版業界にバックアップしてもらえます。
その対価として、印税の額が妥当かどうかを、判断しなければいけないのですね。
電子書籍を自力で出そうとするなら、
「製造・営業・広告 流通・販売」
を自分でこなせるだけの力量をつけるのが先決。
この順番を間違えないようにしましょう。
時間や労力をロスすることなく、あなたのブランディングを最短距離で高めていきましょう。
ご参考になれば幸いです。